(眼のけがの概要 眼のけがの概要 ヒトの顔面は、眼をけがからうまく守る構造になっています。眼球は、丈夫な骨の壁に囲まれたくぼみである眼窩(がんか)に収まっています。まぶたは、異物に対してすばやく閉じて眼を保護するため、眼は軽い衝撃であれば耐えられることもあります。 こうした保護機能があることで、多くの場合、眼のけがが眼球に影響を与えたり、大きな損傷を与えたりすることはあり... さらに読む も参照のこと。)
まぶたは、反射によりすばやく閉じることで、眼を危害から守っています。それでもときに、刺激性の化学物質や有害な化学物質が眼の表面に入り、化学熱傷を引き起こします。
最も危険な化学熱傷は、強酸または強アルカリによるものです。アルカリによる熱傷は酸による熱傷よりも重篤になる傾向があります。アルカリ性の物質には灰汁などがあり、石灰含有製品、コンクリート、石膏やモルタル、オーブンクリーナーや排水管用洗剤、食洗機用洗剤、肥料によく含まれています。熱傷は、液体の飛散で起こることもあれば、頻度は下がりますが、粉末が眼に入ることで起こることもあります。
眼の表面にあるドーム状の透明な構造物(角膜)の重度の化学熱傷、特にアルカリ熱傷は、瘢痕形成、眼の穿孔、感染症、失明につながることがあります。
眼の化学熱傷は強い痛みを伴います。痛みがあまりに強いため、患者はまぶたを閉じたままでいる傾向があります。しかし、まぶたを閉じると眼が物質に長時間さらされることになり、損傷がさらに悪化する可能性があります。
瞬目反射のおかげで、通常は熱が顔に当たると人はまぶたを閉じます。そのため、熱による熱傷は、結膜または角膜ではなく、まぶたに起こる傾向があります。結膜または角膜の熱傷はたいてい軽度で、眼には損傷が残らないこともあります。
熱傷を予防するには、危険性がある物質を取り扱う際に、保護眼鏡またはフェイスシールドを装用することが非常に重要です。
眼の熱傷の治療
水で眼を直ちに洗い流す
医療従事者が生理食塩水を用いて眼の洗浄を続ける
化学熱傷
眼の化学熱傷は、医療従事者が到着する前であっても、直ちに治療します。眼を開け、水または生理食塩水で洗い流します。強酸、強アルカリ、またはその他の腐食性の強い物質による熱傷の場合、眼を30分間以上、または眼のpH(酸性度やアルカリ性度を示します)が正常になるまで継続的に洗浄するべきです。洗浄は、受傷した場所、救急車内、救急医療機関で継続します。痛みがあると眼を開けておくことが難しいため、眼の洗浄中は別の人がまぶたを開いた状態に保っておかなければならないことがあります。
医師などの医療従事者は、けがをした方の眼がよく開くように、点眼麻酔薬をさします。救急医療機関では、特殊な洗浄器具が使用されることがしばしばあります。
洗浄後、医師は眼の表面およびまぶたの裏側を診察し、組織に埋もれている物質があればすべて取り除きます。見えない可能性のある小さな粒子を取り除くために、まぶたの裏側もぬぐいます。
医師は瞳孔を開く薬(シクロペントラートまたはホマトロピンなど)を点眼することがありますが、これは、虹彩(眼の色が付いた部分)の筋肉を弛緩させ、痛みを伴うけいれんを予防するためです。眼の表面を滑らかにし、感染を防ぐために抗菌薬の外用薬(点眼薬または軟膏)が使用されます。眼科医はコルチコステロイドの点眼薬(プレドニゾロンなど)を、期間を限定して投与することがあります。
点眼麻酔薬は痛みを和らげますが、治癒を遅らせる可能性があるため、最初の洗浄以後、通常は使用されません。痛みはアセトアミノフェンまたは、痛みが強い場合はアセトアミノフェンとオキシコドンで治療できます。角膜に熱傷がある場合、抗菌薬軟膏を眼に塗ります。
熱傷が重度の場合、視力を保存し、角膜や虹彩の損傷、眼球の穿孔、まぶたの変形といった重篤な合併症を予防するために、24時間以内に眼科医(眼の病気の評価と[手術を含む]治療を専門とする医師)の治療を受ける必要があります。
より重度の熱傷では、ビタミンCなどその他の外用薬や経口薬も使用されることがあります。重度の熱傷を受けた場合は、頻繁に眼の診察を受ける必要があります。非常に重度の化学熱傷では手術が必要になり、最善の治療を行っても失明したり視力障害が生じたりする例もあります。
通常の熱傷
まぶたの熱傷は、皮膚の熱傷と同様に治療します。まぶたの熱傷の場合には、まぶたをきれいにしてから、眼用の抗菌薬を使用して感染を予防します。結膜または角膜の熱傷は痛みを伴うことがあるため、鎮痛薬が必要になることがあります。医師は調節麻痺点眼薬(シクロペントラートまたはホマトロピンなど)を用いて、瞳孔を収縮させる筋肉を弛緩させ、その筋肉の痛みを伴うけいれんを予防すると同時に、抗菌薬の眼軟膏を使用して感染を予防します。