肋骨骨折は重度の痛みを引き起こし、特に深呼吸したときに痛みがひどくなります。
通常は胸部X線検査が行われます。
痛み止めを投与され、肺の病気を予防するために約1時間に1回、せきまたは深呼吸をするように言われます。
(胸部損傷に関する序 胸部損傷に関する序 多くの胸部損傷では、肋骨、上腹部、肺、血管、心臓、筋肉、軟部組織、胸骨などに損傷が起こります。ときに食道、鎖骨、または肩甲骨に損傷が及ぶこともあります。 米国では、重度損傷による死亡の約25%を胸部損傷が占めます。受傷後数分から数時間で死に至りうる損傷でも、その多くは大手術を行わずに救急医療機関で治療または安定させることができます。... さらに読む も参照のこと。)
肋骨骨折は通常、転落、自動車事故、もしくは野球のバットによる打撲などの強い鈍力によって引き起こされます。しかし、 骨粗しょう症 骨粗しょう症 骨粗しょう症とは、骨密度の低下によって骨がもろくなり、骨折しやすくなる病態です。 加齢、エストロゲンの不足、ビタミンDやカルシウムの摂取不足、およびある種の病気によって、骨密度や骨の強度を維持する成分の量が減少することがあります。 骨粗しょう症による症状は、骨折が起こるまで現れないことがあります。... さらに読む のある高齢者では、弱い力(軽い転倒など)でも起こることがあります。
骨折そのものが重篤な問題となることはまれですが、原因となった外力によって、肺の組織の損傷(肺挫傷 肺挫傷 肺挫傷とは、肺の組織の損傷で、腫れや出血を生じます。 胸痛(通常は胸壁の損傷によるもの)を伴い、患者はしばしば息切れを感じます。 肺挫傷は、胸部X線検査に基づいて診断されます。 損傷が治癒するまで、酸素投与やときに人工呼吸器による呼吸補助を行って治療します。 ( 胸部損傷に関する序も参照のこと。) さらに読む )または肺の虚脱(気胸 外傷性気胸 外傷性気胸は、損傷によって胸壁と肺との間に空気がたまることで起こります。その結果、肺が部分的または完全に虚脱します。 胸痛を伴い、息切れを感じる場合もあります。 通常は、胸部X線検査が行われます。 空気を抜き取り肺が再び膨らむようにするため、通常は胸部にチューブ(胸腔ドレーン)が挿入されます。 ( 胸部損傷に関する序も参照のこと。) さらに読む )など、別の問題が生じることがあります。下位の肋骨を骨折するけがでは、 肝臓 肝損傷 肝臓の損傷は、以下のようないくつかの点で特徴付けられます。 腹部の痛みや圧痛があり、痛みは肩に放散することがあります。 医師は、CTまたは超音波検査により肝損傷を特定します。 肝損傷は治療しなくても治ることが多いですが、ときに損傷を修復したり肝臓の一部を除去したりするための手術が必要になることがあります。 ( 腹部外傷の概要も参照のこと。) さらに読む または 脾臓が損傷 脾損傷 脾臓は左上腹部にあるため、胃の辺りを強打すると、脾臓が損傷を受け、脾臓を覆う膜や内部の組織が裂けることがあります。 脾臓の損傷は、しばしば痛みを伴います。 脾損傷は、超音波検査やCT検査といった画像検査で診断します。 脾損傷を治療するには、多くの場合輸血が必要になり、手術で脾臓の摘出や修復を行うこともあります。 ( 腹部外傷の概要も参照のこと。) さらに読む することもあります。折れた肋骨の数が多いほど、肺や他の臓器を損傷する確率が高まります。
フレイルチェストは、いくつかの連続する肋骨が2箇所以上で折れているときに起こることがあります。フレイルチェストとは、胸壁の一部が残りの部分から分離し、息をするとその部分が残りの部分とは反対方向に動くことです。呼吸はいっそう困難になり、呼吸に疲労を伴います。通常、フレイルチェストを引き起こすほどの打撃は、その下にある肺の組織にも損傷(肺挫傷 肺挫傷 肺挫傷とは、肺の組織の損傷で、腫れや出血を生じます。 胸痛(通常は胸壁の損傷によるもの)を伴い、患者はしばしば息切れを感じます。 肺挫傷は、胸部X線検査に基づいて診断されます。 損傷が治癒するまで、酸素投与やときに人工呼吸器による呼吸補助を行って治療します。 ( 胸部損傷に関する序も参照のこと。) さらに読む )を与えます。
肋骨骨折の症状
肋骨骨折は重度の痛みを引き起こし、特に深呼吸したときに痛みがひどくなります。痛みは数週間続きます。
呼吸すると痛むため、患者の呼吸は浅くなり、その結果、肺の一部の虚脱(無気肺 無気肺 無気肺は、肺の一部または全体に空気がなく、肺がつぶれた状態です。 無気肺の一般的な原因は気管支の閉塞です。 酸素レベルが低くなる、または肺炎が起こると、息切れが生じます。 診断を確定するには胸部X線検査を使います。 治療では、深い呼吸を確実にできるようにすること、気道の障害物を取り除くこと、またはその両方が必要になることがあります。 さらに読む )や 肺炎 肺炎の概要 肺炎は、肺にある小さな空気の袋(肺胞)やその周辺組織に起きる感染症です。 肺炎は、世界で最も一般的な死因の1つです。 重篤な慢性の病気がほかにある患者において、肺炎はしばしば最終的な死因となります。 肺炎の種類によっては、ワクチンの接種によって予防できます。 米国では、毎年約400~500万人が肺炎を発症し(... さらに読む などの合併症のリスクが高まります。次の人では合併症が発生する可能性がさらに高まります。
高齢者
複数の肋骨骨折がある人
高齢者はこのような合併症を発症する可能性が高いため、肋骨骨折で死亡するリスクも若い人より高くなります。
肋骨骨折の診断
医師による評価
1本または複数の肋骨を上から触ると特定の箇所で強く痛む場合、肋骨骨折が疑われます。医師は、けがのある部分をやさしく押すとその感触で肋骨が折れていると分かることもあります。肋骨骨折があってもなくても胸部損傷の治療法は同じであるため、常にX線検査で肋骨骨折を確認する必要があるわけではありません。とはいえ、肺の組織の損傷や虚脱といった、肋骨骨折に伴う重篤な合併症を見つけるため、通常はやはり 胸部X線検査 胸部X線検査 心疾患が疑われる場合は、必ず正面と側面から 胸部X線画像を撮影します。通常、患者が直立した状態で撮影しますが、立っていられない患者にはベッドに横になった状態で胸部X線検査を行うことがあります。そして、装置からX線を体に照射し、X線フィルムに画像を記録します。検査は痛みを伴いません。 X線画像では心臓の形と大きさ、肺や胸部を流れる太い血管の輪郭が分かります。心臓の形や大きさの異常、血管内へのカルシウムの沈着といった異常は容易に確認できます... さらに読む 検査が行われます。胸部X線検査ですべての肋骨骨折が写るとは限りません。
肋骨骨折の治療
痛み止め
せきと深呼吸
肋骨骨折が特定されてもされなくても、痛み止め(鎮痛薬 痛みの治療 痛み止め(鎮痛薬)は、痛みの治療に使用される主な薬剤です。医師が痛み止めを選択する際には、痛みの種類および持続期間と、それぞれの痛み止めで予想されるベネフィットとリスクを考慮します。ほとんどの痛み止めは侵害受容性疼痛(損傷による痛み)に対しては効果がありますが、 神経障害性疼痛(神経、脊髄、脳の損傷や機能障害による痛み)に対してはあまり効果がありません。多くのタイプの痛み(特に... さらに読む )が投与されます。通常、痛みの激しい人には、オキシコドンやヒドロコドンなどのオピオイド鎮痛薬が投与されます。入院患者で激しい痛みのある人では、ときに折れた肋骨につながる神経を麻痺させたり、脊髄の周りに注射(硬膜外麻酔)をしたりして治療します。
肋骨骨折のある人では、肺胞を開いた状態に保ち 肺炎 予防 肺炎は、肺にある小さな空気の袋(肺胞)やその周辺組織に起きる感染症です。 肺炎は、世界で最も一般的な死因の1つです。 重篤な慢性の病気がほかにある患者において、肺炎はしばしば最終的な死因となります。 肺炎の種類によっては、ワクチンの接種によって予防できます。 米国では、毎年約400~500万人が肺炎を発症し(... さらに読む を予防するため、起きている間は約1時間に1回せきまたは深呼吸をする必要があります。
複数の肋骨骨折がある人は、入院治療が必要な場合があります。
フレイルチェストのある人の多くは、けがが治るまで 人工呼吸器 人工呼吸器 人工呼吸器は、肺への空気の出入りを補助するために用いる機械です。 呼吸不全の患者の一部は、人工呼吸器(肺に出入りする空気の流れを補助する機械)による呼吸の補助を必要とします。人工呼吸器によって命が助かることもあります。 人工呼吸器には、多くの使い方があります。通常は、合成樹脂製のチューブを鼻または口から気管に挿入します。人工呼吸器が数日以上必要な場合は、首の前側を小さく切開して(気管切開)、気管に直接チューブを通すこともあります。人工呼... さらに読む による呼吸補助を必要とします。フレイルチェストがある人の一部では、肋骨を安定させるために、また肺炎や入院の長期化、死亡などの合併症のリスクを減らすために手術が必要になる場合もあります。