内性器は全体で1つの経路(生殖路)を形成しています。この経路は以下の器官から構成されています。
腟(産道の一部):性交時にはこの中で精子が放出され、出産時にはここを通って胎児が体外に出ていきます。
子宮頸部(子宮の下部):精子が侵入する場所で、妊婦の分娩の準備が整うと開きます(開大)。
子宮:この中で受精卵が胚から胎児へと成長していきます。
卵管:精子が子宮頸部と子宮を通過した後に、この中で精子が卵子と出合って受精が起こります。
卵巣:ここで卵子が作られ、放出されます。
精子はこの経路を上っていき、卵子はこの経路を下ってきます。
女性の内性器
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処女膜は、腟口のすぐ内側に位置している輪状の組織です(図「 女性の外性器 女性の外性器 」を参照)。処女膜は通常、腟口を囲むように位置します。まれに、腟口が完全に覆われていることがあり(処女膜閉鎖症と呼ばれます)、月経血が通過できなくなります。そのような場合は、処女膜を開く処置が行われます。処女膜は最初の性交で破れることもありますが、膜が柔軟で破れないこともあります。また処女膜は、運動をしている際やタンポンや避妊用のペッサリーを挿入する際にも破れることがあります。破れると通常は少量の出血がみられます。処女膜が破れた場合、処女膜が確認できなくなっていたり、小さな組織片となって腟口の周辺に残っていたりします。
腟
腟は柔らかく伸縮性のある管状の筋肉組織で、その長さは成人女性では10~13センチメートルほどです。腟は 外性器 女性の外性器 外性器には、恥丘、大陰唇、小陰唇、陰核などが含まれます。これらが存在する部分を外陰部といいます。 外性器は主に以下の3つの機能を担っています。 精子が体内に入るのを可能にする 感染性の微生物から 内性器を保護する 潤滑性と性的な快感を与える さらに読む と子宮をつないでいます。腟の上部はより広く、子宮頸部(子宮の下部)を取り囲んでいます。一部の避妊器具(ペッサリーや腟リングなど)や薬剤はここに挿入されます。
腟は性行為および生殖において中心的役割を担っています。腟は以下のための通路として機能します。
精子が子宮、卵管を経て卵子へとたどり着く
経血や胎児が体外に出る
腟の組織は柔らかいため、医師の診察や性交、出産の際には、腟の壁が伸びて開くようになっています。 閉経 女性生殖器系への加齢の影響 閉経が近づいてくると、女性生殖器に急速な変化がみられるようになります。(閉経は最後の月経から丸1年経過した状態と定義されます。) 月経周期が止まり、卵巣からのエストロゲンの分泌も止まります。 閉経後には、小陰唇(腟と尿道の開口部を囲んでいる組織)、陰核、腟、尿道の組織が薄くなります(萎縮)。これに伴い、腟の慢性的な刺激感、乾燥が生じることもあります。おりもの(帯下)が出たり尿路感染症が起こる可能性が高くなります。閉経後には子宮、卵管、卵... さらに読む 後はエストロゲンが減少するため、腟の伸縮性が低下します。これにより痛みが生じることがあります。
腟の内側は粘膜で覆われていて、表層の細胞から分泌される液体と子宮頸部にある腺から分泌される液体によって、湿った状態に保たれています。これらの体液が透明あるいは乳白色の分泌物として少量だけ体外に流れ出ることがありますが、これは正常な現象です。生殖可能年齢の女性の腟内には、ひだやしわがみられます。思春期前や閉経後の女性の腟内は滑らかです。
子宮および子宮頸部
子宮は、筋肉質の厚い壁でできた洋ナシのような形の器官で、骨盤部の中央にあって、前には膀胱、後ろには直腸があります。子宮はいくつかの靱帯によって一定の位置に固定されています。子宮の主な役割は発育中の胎児を維持することです。
子宮は以下から構成されています。
子宮頸部
子宮体部
子宮頸部とは、子宮の下部の細くなった部分のことで、腟の上部につながっています。 内診 内診 婦人科の診療では、性生活、避妊、妊娠、更年期に関する問題などのデリケートな事柄を扱うため、こうした内容について気兼ねなく相談できる専門家を選んでおくべきです。米国では、医師、助産師、ナースプラクティショナー、医師助手などが受診先となっています。 婦人科の評価には 婦人科の病歴聴取および婦人科の診察が含まれます。 婦人科の診察とは具体的には女性の生殖器系の診察を指します。乳房の診察も含まれます。内診は女性の状況や希望に応じて行われます。た... さらに読む の際、医師は腟鏡(腟壁を広げるための金属または合成樹脂製の器具)を用いて子宮頸部の診察を行います。腟と同様、子宮頸部は粘膜で覆われています。
子宮頸部は、精子が子宮に入っていく際の入り口となり、経血が子宮から排出される際の出口となります。子宮頸管は普段は狭くなっていますが、分娩時には広がって、胎児が通過できるようになります。
子宮頸部は通常、細菌に対する有効なバリアとなっています。しかしながら性交時には、 性感染症 性感染症(STI)の概要 性感染症(性病)とは、例外はあるものの、一般的には性的接触によって人から人に感染する病気のことです。 性感染症を引き起こす病原体の種類としては、細菌、ウイルス、原虫などがあります。 キスや濃厚な体の接触を介して広がる感染症もあります。 感染が体の他の部分に広がり、ときには深刻な結果に至る場合もあります。... さらに読む を引き起こす細菌が子宮頸部から子宮内に侵入できるようになります。
子宮の特に狭くなった部分の粘膜には、粘液を分泌する細胞および腺があります。この粘液の粘度が高いため、排卵の直前まで精子はこの部分を通過することができません。排卵期になると、エストロゲンの血中濃度が上昇することで、この粘液が透明でよく伸びるようになります。すると精子は粘液を泳いで通過し、子宮を通って受精が起こる卵管へと入っていけるようになります。
ほぼすべての妊娠が排卵前の3日間に行われた性交によって起こります。しかし、最長で排卵の6日前から3日後までに行われた性交によっても妊娠が成立することがあります。一部の女性では、月経から排卵までの期間が月毎に変化することがあります。そのため 月経周期 月経周期 月経(生理とも呼ばれます)は、子宮の内側を覆っている膜(子宮内膜)が剥がれ落ち、それに伴い出血が起きる現象です。月経は約1カ月の周期で起こり、妊娠中を除けば生殖可能な期間の全体を通してみられます。月経は 思春期に始まり(初潮または初経)、 閉経以降は生涯みられなくなります。(閉経は最後の月経周期から1年経過した状態と定義されます。) 定義として、月経周期は出血が始まった日を開始日として、この日を1日目と数えます。そして、次の月経が始まる... さらに読む 内の様々な時点で妊娠が起こる可能性があります。
子宮体部は、筋肉組織からなり、胎児の成長に合わせて伸縮できるようになっています。分娩時には、この筋肉質の壁が収縮して胎児を押し出すことで、胎児は子宮頸部から腟内を通って体外へと送り出されます。生殖可能年齢の女性では、子宮体部の長さは子宮頸部の2倍ほどですが、閉経後、子宮と子宮頸部はほぼ同じ長さになります。
1回の月経周期(通常は約1カ月)中には、子宮体部の内側の層(子宮内膜)が厚くなる時期があります。その月経周期に妊娠が成立しないと、子宮内膜の組織が剥がれ落ちて出血が起こり、その結果として月経が始まります。
卵管
2本の卵管は約10~13センチメートルほどの長さで、子宮の上端からそれぞれの卵巣の方に伸びています。卵管と卵巣は直接つながってはいません。卵管の先端は広がっていて、指を広げた手のようなじょうご形の構造(卵管采)になっています。卵巣から放出された卵子は、この卵管采に導かれて卵管の入り口に到達します。
卵管の内側は、細い毛のような無数の突起物(線毛)に覆われています。この線毛の動きと卵管の壁にある筋肉の働きによって、卵子は卵管内を子宮の方に送られていきます。通常、卵子は卵管で精子と出会い、 受精 受精 受精卵として始まった新たな命は、いくつもの段階を経て成長していきます。受精卵は胚盤胞、胎芽、胎児へと発達していきます。 月経周期が正常であれば、最後の月経開始日の約14日後に、通常、左右の卵巣のどちらかから1個の卵子が放出されます。卵子が放出されることを排卵といいます。放出された卵子はじょうご形をしている卵管の開口部からさっと卵管内に入ります。 排卵の時期になると、子宮頸部の粘液がサラサラになって伸びがよくなり、精子が子宮へと進入しやす... さらに読む が起こります。受精後、受精卵は子宮に入り、そこで着床します。
卵巣
卵巣は、通常は真珠のような色をしたクルミ大の長めの楕円形の器官です。卵巣は靱帯によって子宮とつながっています。女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)に加えて、一部の男性ホルモンを分泌するほか、卵巣は卵子を作って放出します。未熟な卵細胞(卵母細胞)は、卵巣の壁の中にある液体で満たされた空洞(卵胞)に入っています。この卵胞には卵母細胞が1つずつ入っています。