胸膜疾患の概要

執筆者:Richard W. Light, MD, Vanderbilt University Medical Center
レビュー/改訂 2021年 1月
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    胸膜は薄くて透明な2層の膜で、肺を覆うとともに胸壁の内側も覆っています。肺を覆う膜の層は、胸壁を覆う膜の層と密着しています。この薄くて柔軟性のある2層の膜の間には少量の液体(胸水)があり、これが潤滑油となって、呼吸のたびに2層の膜はくっつくことなく滑らかに動くことができます。この液体が入っている空間を胸膜腔と呼びます。

    胸膜の解剖図

    異常な状況下では、2つの胸膜の間に空気や過剰な液体が入り込み、それにより胸膜の間の空間が広がることがあります。液体が過剰になった(胸水と呼ばれる)状態や、空気が入った(気胸と呼ばれる)状態になると、片方または両方の肺が、呼吸の際に正常に膨らむことができなくなり、肺組織がつぶれてしまうことがあります。胸膜が感染を起こすこともあります(ウイルス性胸膜炎を参照)。

    縦隔(じゅうかく)は、胸の中央にある空間で、前側は胸骨、後ろ側は脊柱、上側は頸部、下側は横隔膜で仕切られています。その中には、心臓、胸腺、一部のリンパ節のほか、気管、食道、大動脈、甲状腺、副甲状腺の一部が含まれています。肺は含まれません。縦隔は以下の3つの部分に分けられます。

    • 前縦隔

    • 中縦隔

    • 後縦隔

    縦隔内には、嚢胞や腫瘍といった異常なかたまりである縦隔腫瘤が形成されることがあります。食道からの内容物が縦隔に漏れ、刺激や感染が起こると縦隔炎が生じることがあります。縦隔炎は、胸部手術(胸骨を開く手術、例えば胸骨正中切開術など)の後にも起こることがあります。縦隔の中に空気が入ると、縦隔気腫になります。

    縦隔の位置

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