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HTLV-1関連脊髄症/熱帯性けい性麻痺(HAM/TSP)

執筆者:

Michael Rubin

, MDCM, New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center

レビュー/改訂 2021年 6月
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HTLV-1関連脊髄症/熱帯性けい性麻痺は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)によって引き起こされる、緩徐に進行する脊髄の病気です。

  • このウイルスは、性的接触、違法薬物の注射、血液への曝露、または授乳によって広がります。

  • 脚の筋肉の筋力低下、こわばり、けい縮が生じ、歩行が困難になるほか、多くの人では尿失禁も起こります。

  • 診断の際、医師は、ウイルスにさらされた可能性について質問し、MRI検査、腰椎穿刺、血液検査を行います。

  • コルチコステロイドなどの薬剤が有用です。けい縮は筋弛緩薬によって治療します。

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は、エイズの原因である ヒト免疫不全ウイルス ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすことのあるウイルス感染症です。 HIVは、ウイルスやウイルスに感染した細胞を含む体液(血液、精液、腟分泌液)と濃厚に接触することで感染します。 HIVはある種の白血球を破壊し、感染症やがんに対する体の防御機能を低下させます。... さらに読む ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 (HIV)と似たウイルスで、ある種の 白血病 白血病の概要 白血病は、白血球または成熟して白血球になる細胞のがんです。 白血球は骨髄の幹細胞から成長した細胞です。ときには成長がうまくいかずに、染色体の一部の並びが変化してしまうことがあります。こうして異常となった染色体により正常な細胞分裂の制御が失われ、この染色体異常がある細胞が無制限に増殖するようになったり、細胞がアポトーシス(不要になった細胞が... さらに読む リンパ腫 リンパ腫の概要 リンパ腫とは、リンパ系および造血器官に存在するリンパ球のがんです。 リンパ腫は、 リンパ球と呼ばれる特定の白血球から発生するがんです。この種の細胞は感染を防ぐ役割を担っています。リンパ腫は、主要な白血球であるBリンパ球およびTリンパ球のいずれの細胞からも発生する可能性があります。Tリンパ球は免疫系の調節やウイルス感染に対する防御に重要です... さらに読む リンパ腫の概要 (どちらも白血球のがん)を引き起こします。

HTLV-1は、以下の行為を介して感染します。

  • 性的接触

  • 違法薬物の静脈内への注射(静脈内投与)

  • 血液への曝露

授乳によって母から子に感染することもあります。この病気が最もよくみられるのは、売春婦、違法注射薬物の使用者、血液透析を受けている人、特定の地域(赤道付近、日本南部、南米の一部など)に住んでいる人です。

HTLV-1関連脊髄症/熱帯性けい性麻痺は、女性により多くみられますが、これはHTLV-1感染が女性により多くみられるためです。

ヒトT細胞白血病ウイルス2型(HTLV-2:ヒトTリンパ球向性ウイルス2型とも呼ばれます)という似たウイルスの感染によっても、同様の病気が起こります。

ウイルスは白血球内に住み着きます。白血球は髄液中にもあるため、脊髄が損傷を受ける可能性があります。脊髄に炎症が起こることで、痛み、温度、位置に関する信号を脊髄から脳に伝える経路や、脳から脊髄を介して筋肉に信号を伝える経路が傷ついてしまいます。しかし、ウイルスそのものより、ウイルスに対する体の反応の方が脊髄に大きな損傷をもたらします。

症状

診断

  • ウイルスに接触したリスクの評価

  • MRI検査

  • 血液中と髄液中のウイルスを確認する検査

HTLV-1関連脊髄症/熱帯性けい性麻痺の診断は通常、その人に認められる症状と、その人がウイルスにさらされた可能性に基づいて下されます。そのため医師は、性的な接触や違法な注射薬物の使用について質問します。

血液のサンプルと 腰椎穿刺 腰椎穿刺 腰椎穿刺 で採取した髄液のサンプルを用いて、ウイルスの断片またはウイルスに対する抗体がないかを調べます。(抗体とは、HTLV-1のような特定の異物による攻撃から体を守るために免疫系が作り出すタンパク質です。)

脊髄の変性などの異常がないかを確認したり、また症状の他の原因がないか調べたりするために、脳や脊髄のMRI検査を行います。

治療

  • インターフェロンアルファ、免疫グロブリン製剤、および/またはコルチコステロイド

  • けい縮に対し、筋弛緩薬

HTLV-1関連脊髄症/熱帯性けい性麻痺に有効であると証明されている治療法はありません。しかし、インターフェロンアルファ(抗ウイルス薬)、 免疫グロブリン製剤の静脈内投与 免疫グロブリン製剤 ウイルスは、核酸( DNAかRNAのどちらか一方)と、それを覆うタンパク質の膜で構成されています。ウイルスが増殖するには、生きた細胞を必要とします。ウイルス感染症は、無症状(明らかな症状はない)から重症の病気まで、幅広い病態を引き起こします。 ウイルスへの感染は、ウイルスを飲み込んだり、吸い込んだり、虫に刺されたりするか、性的な接触を通じ... さらに読む 、コルチコステロイドは、病気の進行を遅らせ、身体障害や痛みを軽減することがあります。(免疫グロブリン製剤の静脈内投与とは、健康な人から採取した抗体を含む溶液を精製したものを静脈から投与することです。)

けい縮は、バクロフェンやチザニジンなどの筋弛緩薬で治療できます。

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