頭痛の概要

執筆者:Stephen D. Silberstein, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2021年 7月
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やさしくわかる病気事典

頭痛とは、頭部のいずれかの部分(頭皮、首の上部、顔面、頭部の中を含む)に生じる痛みのことです。頭痛は医療機関の受診理由として最も多いものの1つです。

頭痛は仕事や日常生活に支障をきたすこともあります。頭痛が頻繁に起こる人もいれば、めったに起こらない人もいます。

頭痛の原因

頭痛は重症化して苦痛になることもありますが、重篤な病気が原因であることは多くありません。頭痛は次の2種類に分けられます。

  • 原発性頭痛:(他の病気によらないもの)

  • 二次性頭痛:(他の病気によるもの)

原発性頭痛には以下のものがあります。

三叉神経・自律神経性頭痛はまれです。

二次性頭痛の原因には、脳、眼、鼻、のど、副鼻腔、歯、あご、耳、または首の病気や、全身の病気(全身性疾患)などがあります。

一般的な原因

頭痛の最も一般的な原因は、以下の2つの原発性頭痛です。

あまり一般的でない原因

より頻度は下がりますが、群発頭痛と呼ばれる原発性頭痛のほか、多くの二次性頭痛(表「頭痛の主な原因と特徴」を参照)もあります。二次性頭痛の原因疾患の中には重篤なものもあり、髄膜炎脳腫瘍、または脳内部への出血(脳内出血)など、脳に影響を及ぼすものは特に注意が必要です。

発熱によって頭痛が生じることもあり、とりたてて脳に影響を及ぼすものでなくても多くの感染症は発熱を伴うため、同時に頭痛が発生します。例えば、ライム病ロッキー山紅斑熱インフルエンザなどの感染症があります。

カフェインの摂取をやめたときや、鎮痛薬を長期間使用していた人がその使用をやめたとき(薬物乱用頭痛と呼ばれます)にも、頭痛が一般的にみられます。

よく誤解されていますが、一般に眼精疲労や高血圧(極めて血圧が高い場合は除きます)が頭痛の原因になることはありません。

頭痛の評価

医師は以下に重点を置きます。

  • 頭痛に別の原因があるかどうか(すなわち、二次性頭痛であるかどうか)を判定する

  • 重篤な病気による頭痛を示唆する症状がないかを確認する

ほかに原因が特定されなければ、どの種類の原発性頭痛であるかを特定することに重点を移します。

警戒すべき徴候

頭痛がみられる場合は、以下の症状に注意が必要です。

  • 感覚または視覚の変化、突然の筋力低下、協調運動障害、けいれん発作、発話困難や話を理解することの困難、眠気や錯乱などの意識レベルの変化(脳疾患を示唆する)

  • 発熱と項部硬直(あごを胸につけようとすると痛みが生じ、ときにあごを胸につけることができない)

  • 突然の激しい頭痛(雷鳴頭痛)

  • こめかみの圧痛(髪をとかす際など)またはかむときのあごの痛み

  • がん、またはエイズなどの免疫機能を低下させる病気(免疫不全疾患)がある

  • 免疫系を抑制する薬(免疫抑制薬)の使用

  • 全身に影響が現れる症状(発熱や体重減少など)

  • 進行性に(頻度または重症度が)悪化する頭痛

  • 眼が赤くなり、光の周りに虹のような輪が見える(光輪視)

  • 極度の高血圧

  • 50歳を過ぎてから始まった頭痛

受診のタイミング

警戒すべき徴候がみられる人は、直ちに医師の診察を受ける必要があります。警戒すべき徴候がみられる場合は、頭痛の原因が以下のような重篤な病気である可能性が疑われます。

  • 発熱と項部硬直を伴う重度の頭痛:生命を脅かす感染症である髄膜炎(脳と脊髄を覆う組織の層と層の間を満たす体液の感染症)(髄膜炎)

  • 雷鳴頭痛:くも膜下出血(髄膜と髄膜の間への出血で、動脈瘤が破裂することで発生する場合が多い)

  • こめかみの圧痛、特に高齢者で体重が減少した場合や筋肉に痛みがある場合:巨細胞性動脈炎

  • がんがある人または免疫機能が(病気または薬剤により)低下している人の頭痛:髄膜炎または脳に広がったがん

  • 眼が赤くなり、光の周りに虹のような輪が見える(光輪視):緑内障(治療しなければ回復不能の視力障害に至る眼の病気)

上記の症状がみられない人で、それまでに経験したことがない頭痛が生じた場合、または普段の頭痛が異常に強くなった場合は、主治医に電話で相談してください。医師は、ほかにみられる症状に応じて、診察を受けに来るように助言します。

医師が行うこと

医師はまず、症状と病歴について質問します。次に身体診察を行います。病歴聴取と身体診察で得られた情報から、多くの場合、痛みの原因と必要になる検査を推測することができます(表「頭痛の主な原因と特徴」を参照)。

医師は以下のような頭痛の特徴について質問します。

  • どのくらいの頻度で起こるか

  • どのくらい続くか

  • どこが痛むか

  • 痛みの強さはどれくらいか

  • どのような痛みか(例えば、ズキズキする、鈍い、ナイフで刺されたような)

  • 頭痛に伴ってほかの症状がみられるか

  • 突然起きた頭痛がどれくらいの時間で最大強度に達するか

  • 何が頭痛の引き金になるか、どうすると頭痛がひどくなるか、どうすると頭痛が軽くなるか

そのほかに次のようなことも質問されます。

  • 今までに頭痛はあったか

  • 再発した頭痛かどうか、もしそうなら、最初に始まったのはいつで、どのくらいの頻度で起きているか

  • 現在の頭痛はこれまでの頭痛と同じか異なるか

医師は頭痛の危険因子についても質問します。具体的には以下のものがあります。

  • 特定の薬剤を使用しているかどうか、またはその使用をやめたかどうか

  • 頭痛の原因になりうる病気があるかどうか

  • 家族に重度の頭痛がある人がいるかどうか

  • 最近頭部に外傷を負ったかどうか

  • 最近、腰椎穿刺を受けたことがあるかどうか

受診する前に上記の質問にどのように答えるか考えて、それを書き留めておくのもよいでしょう。ときには医師から、頭痛に関連する質問の大半を網羅した質問票に回答するよう指示されることがあります。受診前に質問票に回答してから、それを診察に持っていく場合もあります。それらの情報を書き出しておくことで、時間を節約でき、評価の参考にもなります。

全身の身体診察も行います。身体診察では、頭頸部のほか、脳、脊髄、神経の機能(神経学的診察)に重点が置かれます。ときに眼の診察を行うこともあります。

検査

ほとんどの場合、検査の必要はありませんが、重篤な病気が疑われる場合は検査を行います。特定の病気が疑われる場合は、できる限り早く検査を行います。それ以外の場合は、1~数日以内に検査を行います。

以下がみられる場合は、MRI検査MRアンギオグラフィー検査(血管の詳細な画像が撮影できる)、またはMRIが利用できないか禁忌がある場合には、CT検査をできるだけ早く行います。

  • 雷鳴頭痛

  • 意識レベルの変化(眠気や錯乱など)

  • 発熱と項部硬直(あごを胸につけようとすると痛みが生じ、ときにあごを胸につけることができない)

  • 検眼鏡による眼の診察で視神経の腫れ(乳頭浮腫)が認められる

  • 感染に対する重篤な全身反応(敗血症)を示唆する症状(特定の発疹やショックなど)

  • 脳疾患を示唆する症状(感覚または視覚の変化[複視を含む]、突然の筋力低下、協調運動障害、けいれん発作、発話困難や話を理解することの困難など)

  • 極度の高血圧

  • 頭痛や意識消失を引き起こす頭部外傷

雷鳴頭痛がみられる場合は、MRアンギオグラフィー検査を直ちに行います。

以下の状態がみられる場合は、およそ1日以内にMRI検査を行います。

  • がん

  • 免疫機能が(エイズなどの病気または薬剤により)低下している

以下のような特徴がみられる人には、数日以内にMRI検査またはCT検査(MRI検査が利用できないか禁忌の場合)を行います。

  • 50歳を過ぎてから始まった頭痛

  • 体重減少

  • 複視

  • 新たに発生した頭痛で、朝目覚めたときに悪化する、または痛みで目が覚めてしまう

  • 慢性的な頭痛の頻度、持続時間、または強度が高まっている

以下の場合は腰椎穿刺を行います。

  • 急性の髄膜炎または脳炎(脳の感染症)が疑われる場合

  • CT検査、MRI検査、またはその他の画像検査で異常がみられない場合も含めて、雷鳴頭痛(くも膜下出血を示唆します)がある

  • 免疫機能が低下している場合

  • 頭痛が悪化していて、医師が特発性頭蓋内圧亢進症または慢性髄膜炎を疑っている

通常、頭蓋内の圧力(頭蓋内圧)が腫瘍、膿瘍、血腫などによって上昇していると考えられる場合には、腰椎穿刺の前にCTまたはMRI検査を行います。頭蓋内圧が上昇していると、腰椎穿刺は危険である可能性があります。頭蓋内圧が上昇した状態で髄液が排出されると、脳の一部が突然下に移動することがあるためです。脳の各部分を仕切っている組織にあいた小さな穴から脳の一部が押し出されると、脳ヘルニアと呼ばれる生命を脅かす状態に陥ります。

その他の検査も、診察の結果や疑われる原因に応じて、数時間から数日以内に行われます。

頭痛の治療

頭痛の治療法は頭痛の原因によって異なります。

緊張型頭痛または軽いウイルス感染症に伴う頭痛である場合、痛みを和らげるためにアセトアミノフェンまたは非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を使用できます。

高齢者での重要事項

50歳以降に頭痛が始まった場合、何らかの反証がない限り、医師は通常、別の病気が原因で頭痛が生じていると考えます。巨細胞性動脈炎、脳腫瘍、硬膜下血腫(転倒などによる)など、頭痛の原因になる多くの病気は、高齢者でより多くみられます。

高齢者における頭痛の治療には限界があります。高齢者では、片頭痛や群発頭痛の治療薬(トリプタン系薬剤やジヒドロエルゴタミン―表「片頭痛の治療に用いられる主な薬剤」を参照)を使用できない病気がある可能性が高くなります。そのような病気としては、狭心症、冠動脈疾患、コントロール不良の高血圧などがあります。

また、眠気を催す頭痛薬を使用する必要がある高齢者では、注意深いモニタリングが必要です。

要点

  • 頭痛の原因が重篤な病気であることは少なく、特に若い人に発生する場合、長期間同じ性質の頭痛が続く場合、診察の結果が正常な場合は、心配する必要はほとんどありません。 

  • 頭痛が頻繁に起こるか、警戒すべき徴候がみられる場合は、医師の診察を受ける必要があります。 

  • 大半の頭痛に検査は不要です。

  • 医師は通常、病歴、症状、身体診察の結果に基づいて頭痛の種類や原因を判定できます。

  • 重篤な病気(脳出血や中枢神経系の感染症など)が原因であることが疑われる場合、通常はMRI検査を(たいていの場合は直ちに)行います。 

  • 髄膜炎、脳炎、またはくも膜下出血が疑われる場合は、頭蓋内の圧力を上昇させる異常を除外するために、通常はCT検査やMRI検査を行った後に腰椎穿刺を行います。

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